ファイバーとフォトニックチップの結合:マイクロレンズとエッジカプラを用いたアプローチ
概要
本記事では、光ファイバーからフォトニックチップへの結合を、マイクロレンズとエッジカプラを駆使して実現する方法について詳述します。この手法は、Ansys LumericalとAnsys Zemax OpticStudioを活用し、FDTD(有限差分時間領域)とPOP(物理光学伝搬)を組み合わせることで、ミスアライメントによる結合効率や電力損失を定量的に評価でき、効率的かつ低挿入損失の設計を支援します。
ファイバーとフォトニックチップ結合の重要性
フォトニクス分野において、ファイバーとチップの結合は非常に繊細で、わずかなズレやアライメントの誤差がシステム全体に大きな影響を及ぼします。このプロセスを最適化するために、LumericalとOpticStudioを連携させたワークフローが有効であり、様々な条件下での結合性能を評価することで、開発コストを削減し、効率的な結合を実現することが可能です。
ワークフローの詳細
ステップ 1:Lumerical MODE によるファイバーモード解析
最初のステップとして、Lumerical MODE FDE(有限差分固有モード)ソルバーを利用してファイバーのモードを解析し、ZBF形式でフィールドをエクスポートします。これにより、ガウシアンモード以外のシングルモードファイバー(例:SMF-28)にも対応可能で、コア半径やクラッドの屈折率などのパラメータ設定が行えます。
ステップ 2:OpticStudio によるマイクロレンズのアライメント
次に、OpticStudioのPOP解析を使用してマイクロレンズをモデル化し、ファイバーからチップ端面までのフィールド伝搬をシミュレートします。水平・垂直方向の並進や回転のズレを設定し、複雑なアライメント条件下での結合性能を評価します。生成されたフィールドとパラメータはさらにエクスポートし、次の解析に役立てます。
ステップ 3:自由空間から導波モードへの変換(Lumerical FDTD)
次に、OpticStudioでエクスポートしたフィールドをLumerical FDTDにインポートし、カスタムソースとして設定します。これにより、自由空間から導波路への電磁界伝搬を高精度でシミュレーションでき、最終的な入力電磁場の損失や結合性能を検証します。
ステップ 4:EMEソルバーによるスポットサイズコンバータのモード変換
最後に、Lumerical MODEのEME(固有モード展開)ソルバーを用いて、エッジカプラのスポットサイズコンバータのモード変換を行い、最終的な結合電力を算出します。この方法は、特に計算負荷が大きいSSCデバイスのシミュレーションに適しており、効率的かつ正確に結合性能を評価します。
重要な設定と最適化ポイント
POPサンプリングとデータエクスポート
このワークフローでは、電場のZBFデータのインポートとエクスポートが重要です。Lumericalでのエクスポート時には、均一な空間サンプリングが求められ、OpticStudioでの設定では、回折アーティファクトを防ぐためのガードバンドをリサンプリングにて追加しています。
アライメント変数の検討
ファイバーとマイクロレンズ間の位置関係や回転ズレを考慮することで、結合の堅牢性を向上させます。特にX軸とY軸方向の傾き(チルトミスアライメント)も検討することで、さらなる精度を確保します。
EMEソルバーの収束性向上
最適化されたモード数、横メッシュ解像度、セル数を設定することで、計算効率を保ちながら高精度のシミュレーションが可能です。また、前方伝搬モードの係数を調整することで、結合性能をさらに向上させます。
モデルの拡張と自動化
このワークフローは、より高度な解析や自動化を目的とする場合、Ansys optiSLangと統合することで、複雑な設計シナリオにも対応可能です。OpticStudioとLumericalモジュールの連携により、パラメトリック解析やアライメント許容範囲の設定、歩留まり解析を含む包括的な設計環境を提供します。
実用的な応用
フォトニックチップ統合が進む中で、3D集積回路における光学部品のコパッケージングが重要視されています。このワークフローにより、効率的な設計、コスト削減、システム信頼性向上が期待され、現代のフォトニックシステム設計に不可欠なツールとなります。
マイクロレンズとエッジカプラを活用することで、ファイバーとフォトニックチップ間の結合性能が最適化され、先進的なフォトニクスアプリケーションの基盤となることが期待されています。