一般的な Lumerical FDTD トラブルシューティングのヒントとコツ
FDTD のシミュレーションを設定して実行する際に,不正確であると思われる予期しない結果が得られるのは,珍しいことではありません。これらの予期しない結果は,物理的にあり得ないものや (伝送結果が 1 より大きいなど),他のソース (論文や他のシミュレーションなど) の結果と異なることがあります。これは,シミュレーションの設定において,誤りがあることを示している可能性があります。
不正確な結果を引き起こす要因は数多く考えられ,また,これらの問題は発生するたびに同じ結果をもたらすとは限りません。これは,シミュレーションのトラブルシューティングに関しては,問題を一元的に扱うのは難しいことを意味します。しかし,ここでは FDTD によるシミュレーションにおいて不正確な結果やエラーが得られたさいに,その原因を特定するために役立つと思われるヒントや戦略をいくつか紹介します。
FDTD によるシミュレーションにおいて問題が発生した場合は,次の手順がエラーの原因を特定するために役立つことがあります。
重要な設定の確認:
Key Lumerical FDTD setting (FDTD の重要な設定) において説明されているシミュレーションの設定が正しいことを確認してください。ここでは,Lumerical FDTD によるシミュレーションにおいて,もっとも重要となる設定が説明されています。たとえば,メッシュ,シミュレーションの時間,およびシミュレーションの領域など,多くの場合において,Lumerical FDTD によるシミュレーションでエラーの原因となることが説明されています。
オンラインリソース検索:
シミュレーションのトラブルシューティングに役立つさまざまなオンラインのリソースがあります。たとえば,Ansys Learning Forum (ALF) には,トラブルシューティングに関するカスタマサポートの事例が掲載されています。ほかのユーザがあなたと同じような問題に遭遇した可能性が高いので,シミュレーションにおいて問題が発生した場合は,ALF で同様の問題を検索することをお勧めします。Application Gallery (アプリケーションギャラリー) には,多くのシミュレーションの事例や,さまざまなタイプのシミュレーションへのアプローチが説明されています。これらの事例には,特定のタイプのシミュレーションを適切に設定するヒントが含まれています。
シミュレーションの単純化:
FDTD のシミュレーションを始めるときは,ソースおよびモニタに加えて,シンプルな構造から始めることをお勧めします。このシンプルな構造のシミュレーションの結果が正確であれば,それぞれのステップにおいて設定が正しいことを確認しながら,シミュレーションの複雑さを徐々に増やしていくことができます。同様のアプローチは,トラブルシューティングにも有効です。完全なシミュレーションで不正確な結果が得られた場合は,シミュレーションの複雑さを段階的に下げることによって,シミュレーションやジオメトリのどの部分でエラーが発生しているかを特定することができます。たとえば,以下のようになります。
- 完全な 3Dでの FDTD シミュレーションへ拡張する前に,2D でのシミュレーションで構造を近似することから始めます。2D でのシミュレーションは実行速度が速いため,シミュレーションの開発に要する時間を短縮することができます。
- 広帯域のシミュレーションへ移行する前に,非分散材料を用いて,単一波長でのシミュレーションから始めてください。
- パターン化された基板からの透過/反射を測定する場合は,まずパターン化されていない基板のシミュレーションを行い,FDTD の結果と stackrt コマンドによる結果を比較してください。
モニタでのフィールドの表示:
Movie (ムービ) または DFT モニタを使用して,シミュレーションのフィールドを表示することができます。これは,エラーが発生した場所を特定することに役立ちます。たとえば,これらのモニタを使用して,発散するシミュレーションにおいてフィールドが発散している場所を特定したり,ソースが入力パルスを適切に注入しているかを判断することができます。
帯域の制限:
FDTD では広帯域のシミュレーションの結果を得ることができますが,ある状況においては,広い帯域でのシミュレーションは機能しないことがあります。たとえば,good material fit (材料の適合性) を見極めるのが困難であったり,PML 境界において,すべての波長が適切に吸収されなかったり,また,ソースが適切に光を注入しないことがあります (最後の点については,multifrequency injection (周波数射出) を使用することで改善できることがあります) 。このような理由から,帯域には結果が計算できる波長のみを含める必要があります。広い帯域 (光学シミュレーションにおいては,数百ナノメートルを超える場合) を使用する場合は,帯域を分割して,複数のシミュレーションを実行することで,問題を解決できることがあります。
ソースのフィールドプロファイルの確認:
ソースフィールドが不適切に計算されたり,ソースオブジェクトのエッジによって切り捨てられるのは,よくあることです。FDTD のシミュレーションを実行する前に,ソースのフィールドプロファイルを再確認することをお勧めします。そのさいに,ソースのエッジでモードフィールドの振幅がゼロに近い値(約 10^-3)になるように,ソースのスパンが十分に大きいことを確認してください。また,偏光面が正しいことを確認するために,ソースの電界プロファイルにおいて,それぞれの成分の確認が役立つことがあります。たとえば,下記のモードソースのスパンは小さすぎて,モードフィールド全体を含めることができていません。
コンバージェンステスト (収束試験):
設定がほぼ正しいと思われる場合は,convergence testing 4 (収束試験) を行い,シミュレーションの設定を確定し,結果が正確であることを確認する必要があります。これは,公開されている論文や別のシミュレーションなどの別のソースからのデータおよび結果を比較する場合に,特に重要なステップになります。