光集積回路における光結合効率の向上:マイクロレンズとグレーティングカプラの最適設計
光集積回路(PIC)において、光ファイバーと導波路の間での効率的な光結合を実現するための重要な要素は、グレーティングカプラとマイクロレンズの協調設計です。このアプローチにより、結合効率が飛躍的に高まり、さらにはモード不一致や微細な位置ズレに対する耐性も強化されます。この記事では、Ansys LumericalおよびZemax OpticStudioを活用したマルチスケールシミュレーションを駆使した設計ワークフローを紹介します。
グレーティングカプラとマイクロレンズの最適化戦略
フォトニックデバイスの最適設計において、グレーティングカプラとマイクロレンズの組み合わせは、光の拡散とコリメーションを効果的に行うための必須手法です。特に、波長スケールを超える構造による光の挙動を解析する際には、物理光学伝搬(POP)を適用します。Lumerical FDTDソルバーを用いて、グレーティングカプラからの電磁場の出力を解析し、そのデータをZBF形式でエクスポートします。Zemax OpticStudioにこれらのデータをインポートすることで、マクロスケールでの光伝搬特性を詳細に解析することが可能となります。
光結合効率の向上とモード不一致の軽減に向けたアプローチ
ファイバーと導波路の間での光結合効率を最適化するためには、マイクロレンズの曲率および位置を精密に調整する必要があります。例えば、光ファイバーと導波路の間に300µmの距離がある場合、レンズの曲率半径を500µmに設定することで、最高の結合効率が得られることがシミュレーションにより示されています。また、ミスマッチに対する耐性を強化するために、マイクロレンズの導入が有効であることも明らかにされています。これにより、システムのトータルパフォーマンスを向上させることができます。
システム全体の損失と効率解析
システム全体の損失は、LumericalとZemaxのシミュレーション結果を統合することで詳細に解析されます。例えば、出力結合損失は40%程度であることが示されており、マイクロレンズの導入により結合効率が劇的に向上します。また、入力方向での光結合効率も同様に解析され、最終的なシステム効率を最大化するための最適設計が可能となります。このように、マルチスケールシミュレーションを駆使した光結合設計は、光集積回路の性能を飛躍的に向上させる鍵となります。