Ansys Lumerical FDTD シミュレーションの主な設定
この記事では、FDTD シミュレーションにおいて、見落としがちな設定や不適切な設定についてご紹介します。まず、シミュレーションを設定する際に参照することができるチェックリストを提供します。その後、チェックリストの各ポイントについて、より詳細な説明を行います。
Lumerical FDTD 設定の主なチェック項目
- メッシュサイズ: メッシュのオーバーライド領域とインデックスモニターを使用して、小さなフィーチャが確実に解決されるようにします。
- メッシュの順序: インデックスモニターを使用して、ジオメトリオブジェクトのメッシュの順序が正しいことを確認します。
- マテリアルのフィット: マテリアルエクスプローラーを使用して、データに対するマテリアルの適合性を確認します。
- シミュレーション時間: オート シャット オフのしきい値に達する前にシミュレーションが終了してしまう場合は、シミュレーション時間を長くしてください。
- シミュレーションスパン: ジオメトリと PML の境界線の間に半波長分のスペースができるまで、シミュレーションスパンを大きくします (ジオメトリが境界線を通過する場合を除く) 。
- 境界条件: 境界条件の選択と境界条件の設定が正しいかどうかを確認します。
- ソーススパン: ビーム/モードソースのスパンが十分に大きく、入力フィールドが切り取られていないことを確認します。DFT やムービーモニターを使用して、ソースが正しく機能しているのを確認することができます。
メッシュサイズ
FDTD アルゴリズムの精度を決定する重要なパラメータは、波長あたりのメッシュセル数です。Lumerical FDTDにおいてデフォルトの 「auto-nonuniform mesh (自動不均一メッシュ) 」 では、セルの数が 「mesh accuracy (メッシュ精度)」 の設定によって, 波長ごとに一定数のセルを持つメッシュが自動的に生成されます。
初期のシミュレーションでは、メッシュをあまり細かくする必要はないので、メッシュ精度は 2 または 3 で十分です。しかし、初期のシミュレーションでも、メッシュ オーバーライド オブジェクトを使用して、シミュレーション領域の特定のエリアでメッシュを精緻化する必要がある場合があります。メッシュオーバーライドが必要となる領域には、デフォルトのメッシュでは十分に解決できない微細な特徴を持つデバイス形状 (薄い層など) や、電界が急激に変化する金属と誘電体の界面などがあります。直線的なジオメトリの場合は、メッシュオーバーライドを使用して、メッシュセルがジオメトリとオーバーラップするようにするのが最適です。 例えば、下の画像は薄い層のイメージで、最初はデフォルトのメッシュで、次にメッシュのオーバーライド領域で、Y 方向に薄い層と完全に重なる 4 つのメッシュセルがあることを保証する「dy」設定をしています。
デフォルトのメッシュ:
メッシュオーバーライドあり:
インデックスモニターは、シミュレーションを実行する前にメッシュを表示し、すべてのフィーチャが解決されていることを確認するために使用することができます。また、ビューポートの左にあるツールバーの「View simulation mesh」ボタンをクリックして、メッシュグリッドを表示させることもできます。
最初のシミュレーションを実行した後にコンバージェンス・テストを行うことで、正確な結果を得るために必要なメッシュ設定を決定することができます。
メッシュオーダー
ジオメトリのオブジェクトが重なっている場合、どのオブジェクトのインデックスを使用するかは、そのメッシュの順番で決定されます。オブジェクトが重なっている場合は、低いメッシュオーダーが優先されます。インデックスモニターを使用して、正しいインデックスがメッシュで使用されているかどうかを確認する必要があります。
詳細はこちら Mesh Order (メッシュオーダー)
マテリアルフィット
テリアルエクスプローラーで、シミュレーションの対象となるすべてのマテリアルのフィットを確認します。フィットはデータポイントに近く、フィットにゲインや鋭いピークがないことが必要です。
詳細はこちら: Modifiying the Material Fits (マテリアルフィット)
シミュレーション時間
FDTD シミュレーションは、シミュレーション時間の終了、自動シャットオフのしきい値への到達 (フィールドが十分に減衰したことを意味します) 、およびフィールドの発散という 3つの条件によって終了します。シミュレーションを実行した後、FDTD 領域オブジェクトの 「status」の結果をチェックして、シミュレーションの終了を確認するか、ログファイルを確認することができます。
ステータス =
- 0: レイアウトモードでのシミュレーション
- 1: 最大のシミュレーション時間に達したため終了
- 2: 自動シャットオフの基準に達したため早期終了
- 3: シミュレーションの発散
一般的には、オートシャットオフのしきい値でシミュレーションを終了させるのがベストです。シミュレーション時間を過ぎてシミュレーションを終了すると、周波数ドメインの結果に誤差が生じることがあります。シミュレーション時間に達してシミュレーションが終了する場合は、シミュレーション時間を長くしてください。共振構造がある場合や伝搬距離が長い場合には、シミュレーション時間を長くする必要があることがあります。
詳細はこちら: Auto Shutoff Level Criteria (オートシャットオフのレベル判定)
シミュレーションスパン
FDTD 領域のスパンは、シミュレーションの対象となるジオメトリオブジェクトの側面からPML 境界が半波長離れるように設定する必要があります。ここでいう 「波長」 とは、オブジェクトおよび境界の間にある材料の屈折率を考慮した上で、光源のスペクトルの中で最も長い波長を指します。ただし、基板やクラッドなど、シミュレーション領域からはみ出すことが想定されるオブジェクト (入出力導波路の端部など) は例外です。例えば、Z 方向に単純に伸びる直線導波路のシミュレーションが、これに相当します。
XY 断面
- 基板は、Xmax/min および Ymin の境界線を越えています。
- X max/min と Y max のPML 境界は、導波路の側面から半波長以上離れています。
XZ 断面
- 導波路の両端は、Zmax/min の境界を通過しています。
境界条件
PML 境界を使用する場合、デフォルトでは “standard” PML プロファイルを使用してください。周期的なシミュレーションや、大きな角度で光が伝播するシミュレーションでは、”steep angle “ プロファイルを使用してください。”stabilized” プロファイルは、発散の問題がある場合にのみ使用してください。
構造とソースが周期的である場合、垂直入射のソースには “Periodic” 境界を、角度のついたナローバンドのソースには “Bloch” 境界を、また角度のついたブロードバンドのソースには “BFAST” 境界を,それぞれ使用してください。 symmetry (シンメトリー) 境界を使用する場合は、ジオメトリおよびソースの両方が対称であることを確認してください。対称か反対称かの選択は、ソースの偏光によります。目安として、ソースの偏光を示す矢印は、同じ色の境界に平行で、異なる色の境界に垂直になるようにします。
詳細はこちらをご覧ください: PML boundaries (PML 境界)、Symmetry boundaries (対称性のある境界)、Periodic boundaries (周期性のある境界)
ソーススパン
よくある間違いは、入射したフィールドのスパンよりもソースのスパンを小さく設定することです。これは、ガウシアンソースやモードソースで特によく見られます。このようにソースを切り詰めると、散乱やその他の入射エラーの原因となります。ソースフィールドがソーススパンの端で十分に減衰していること (10^-3 から-10^-4 の振幅) を、視覚的に確認する必要があります。これには、ログスケールを使用すると便利です。 また、DFT モニターやムービーモニターを設置することで、ソースが適切に入射されているかを判断することができます。DFT モニターの結果について,上の画像は注入されたフィールドに対してソースのスパンが狭すぎることを,また下の画像は注入されたフィールドに対してソースのスパンが適切であることを,それぞれ示しています。不適切なスパンの画像では、光源の後ろと横に散乱光があることに注意してください。
ソースのスパンが狭い:
ソースのスパンが適切: