概要
メタアトムの物理から、製造レイアウトまで
メタレンズ設計は、メタアトムの電磁応答、位相プロファイルの設計、物理ピッチ上へのメタアトムの割り当て、性能の評価、製造データの出力が、それぞれ別の工程にまたがります。Photonica Metalens Engineは、この五つの工程をひとつのツールの中でつなぎます。
口径・焦点距離・設計波長・フィールド条件・位相プロファイルを設計仕様として定義し、メタアトムライブラリから各配置点に最も近いエントリを選び、位相を形状へ対応づけて配置データベースを作成します。配置したメタレンズは内蔵の解析でその場で評価でき、Ansys Zemax OpticStudioでは光学システムとして評価・最適化・検証できます。
Photonicaには検証済みのメタアトムライブラリを搭載しています。新しい材料・波長・構造条件に対応するライブラリを生成する場合は、Ansys Lumericalを使用してRCWA解析・ライブラリ生成を行います。設計はスキーマ検証付きのJSON設計仕様として保存され、同じ仕様から再現できます。GUIに加えてコマンドラインからの実行にも対応します。
設計ワークフロー
五つの工程で設計を進める
設計条件の定義からメタアトムライブラリ、アセンブリ、解析、製造データの出力まで、同じツールの中で進みます。
01
設計条件
口径、焦点距離、設計波長、フィールド条件、位相プロファイルを設計仕様として定義します。NA、Fナンバー、回折限界スポット径、焦点深度、色収差による焦点移動、フレネルゾーン数、メタアトム数、想定されるGDSのファイルサイズは、計算を始める前に算出されます。設計仕様はスキーマ検証付きのJSONファイルとして保存され、不備は計算前にフィールド名を添えて報告されます。
02
メタアトムライブラリ
メタアトムごとのRCWA応答をまとめたライブラリを使用します。TiO₂のピラーおよびホール(532 nm)とSi₃N₄(940 nm)の検証済みライブラリを標準搭載しています。新しい材料・波長・構造条件が必要な場合は、Ansys Lumericalで半径×高さのスイープを行い、ライブラリを生成・検証します。
03
メタレンズアセンブリ
目標位相に最も近いライブラリエントリを、物理ピッチ上のすべての配置点で選択します。中間グリッドを介さずに厳密に評価し、口径によらず一定のメモリで処理します。量子化RMS、平均透過率、エントリ別の使用状況とともに、配置データベースを生成します。
04
解析・評価
配置したメタレンズをPhotonica内蔵の解析で評価します。設計位相はOpticStudioの設計解析で評価し、必要に応じてベンダーエンジンによる検証も行えます。
05
製造データ出力
製造向けのGDSII、ROI(領域指定)でのGDS出力、配置データベースを書き出します。出力後は独立したリーダによる読み戻し検証を行います。
位相プロファイルと設計プリセット
単焦点(双曲面)、開口分割による二焦点、多項式補正を加えたプロファイルに対応します。外部で作成した位相マップも取り込め、.npy、.csv、OpticStudioのグリッド.datを読み込めます。設計中は折り返し位相をライブプレビューで確認でき、全解像度のズーム表示にも対応します。
レーザー集光・ビームデリバリー、広視野イメージング、内視鏡先端光学など、代表的な設計条件から開始できる設計プリセットを用意しています。
メタアトムライブラリ
検証済みライブラリを搭載し、新しい条件にも対応
メタアトムのRCWA応答をまとめたライブラリが、位相から形状への対応づけの基準になります。
検証済みライブラリを標準搭載
TiO₂のピラーおよびホール(532 nm)、Si₃N₄(940 nm)の検証済みライブラリを、導入初日から使用できます。各ライブラリはRCWAに対する独立した全波FDTD解析で検証しており、透過率の一致はピラーで1%未満、ホールで約2%、一軸異方性膜で0.2%です。
Ansys Lumericalによるライブラリ生成
新しい材料、基板、ピッチ、波長に対応するライブラリは、半径×高さのスイープで生成します。チェックポイントと再開に対応し、高さや入射角は同じライブラリファイルに追加できます。
対応するメタアトム形状と入射条件
ピラー、ホール(膜のエッチング開口)、リング(円環状の壁)に対応し、いずれも本来の形状のまま配置とレイアウト出力まで引き継がれます。斜入射でのs偏光およびp偏光の応答、一軸異方性(複屈折)膜材料にも対応します。
ライブラリQAと高さスライス選択
位相・透過率マップ、高さに対するカバレッジ曲線、極座標のカバレッジ表示を確認できます。推奨の高さスライスが提示され、製造上の要求で高さを固定する指定にも対応します。ライブラリと設計の対応はファイル属性を基準に確認され、不一致は計算前に検出されます。
Photonicaには検証済みのメタアトムライブラリを搭載。新しい材料・波長・構造条件に対応するライブラリを生成する場合は、Ansys Lumericalを使用してRCWA解析・ライブラリ生成を行います。
メタアトム配置、位相・透過特性、ライブラリ使用状況を含む解析結果例
解析
配置したメタレンズを、その場で評価
配置済みのメタレンズを対象に、Photonica内蔵の解析が数秒で結果を返します。OpticStudioによる光学システムの評価とは役割が異なり、互いを補完します。
Photonica内蔵解析(配置済みレンズ)
製造後を想定したStrehl比、PSFと回折限界に対するFWHM、集光効率、スルーフォーカス強度分布、包囲エネルギーとMTF、フィールド角に対するPSF、色収差による焦点移動、遠方界の角度別パワー配分、予測焦点位置、配置レポートと断面情報、およびPSFを用いたイメージングシミュレーション(USAFターゲットなど)。数秒で完了します。
OpticStudioによる設計解析
設計位相に対するオンアクシスおよびフィールド×波長のStrehl比、HuygensとFFTのPSF、FFT・幾何・スルーフォーカスのMTF、回折および幾何の包囲エネルギー、RMS半径付きスポットダイアグラム、波面マップ、レイおよびOPDファン、3D光線追跡レイアウト。
ベンダーエンジンによる検証
配置したレンズをAnsysのサブ波長メタレンズプラグインに渡し、ライブラリが特性化した入射角でフィールドごとに読み戻します。設計位置に対する焦点重心、±10 µm内のエネルギー、相対効率、焦点面の照度画像。
設計値と製造後予測値の両方が存在する解析では、両者を並べて出力します。指標の定義は出力データに記録されます。
フィールド別スポット、PSF、集光特性、波長依存性などの解析結果例
OpticStudio連携による最適化
OpticStudioで解析し、提示された多項式位相補正をPhotonicaの設計へ合成、実際のメタアトムライブラリに対して再アセンブリしたうえで再解析し、前後を比較します。最良の実測結果を保持するリグレッションガードが働きます。
重みづけはオンアクシス、バランス、広画角、またはフィールドごとの任意指定から選べ、メリット関数は波面RMS、幾何スポット、用途周波数でのMTFコントラストから選択します。補正は既定で指定した焦点距離を保ち、焦点移動は許可した場合にのみ合成されます。フィールドごとの前後比較(Strehl比・MTF・スポット)を確認して適用するまで、保存済みの設計は変更されません。
ツールの役割
LumericalからOpticStudioまでをつなぐ
メタレンズ設計は複数のツールにまたがります。それぞれが担う役割は異なり、Photonica Metalens Engineはその受け渡しを一続きの設計ワークフローとしてつなぎます。
Ansys Lumerical
メタアトム解析・ライブラリ生成
RCWA解析→材料・波長・構造スイープ→メタアトムライブラリ
新しい材料、波長、形状、高さ、入射角などの条件に対応するメタアトムライブラリを、RCWA解析によって生成・検証します。標準搭載のライブラリは全波FDTDによる相互検証を経ています。
Photonica Metalens Engine
メタレンズ設計・配置・大規模レイアウト生成
位相プロファイル→メタアトム選択→位相‐形状マッピング→大規模配置→配置データベース→GDS
位相プロファイルを扱い、各配置点でメタアトムを選択して位相を形状へ対応づけ、大規模なレイアウトを生成します。内蔵の設計プレビューで配置済みレンズをその場で確認できます。
Ansys Zemax OpticStudio
光学システム評価・最適化・検証
Strehl比・PSF・MTF→波面・スポット→フィールド/波長評価→最適化
メタレンズを光学システムに組み込み、Strehl比、PSF、MTF、波面、スポットをフィールドと波長にわたって評価し、光学システムとして最適化します。ベンダーエンジンによる検証にも対応します。
三つのツールは役割が異なり、相互に置き換えられるものではありません。
製造データ出力
大規模レイアウトを、そのまま製造データへ
配置データベースを起点に、製造向けのGDSII、領域を指定したROI GDS、受け渡し用データを書き出します。
製造向けGDSIIとROI出力
1 nmのデータベース単位で出力し、レイヤおよびデータタイプを指定できます。口径によらず一定のメモリでストリーム出力し、ピラーとホールは円、リングは真の円環ポリゴンとして書き出します。レイアウト全体に加えて、任意の矩形領域を詳細なGDSとして数秒で書き出せます。
配置データベースと大規模レイアウト
すべてのメタアトムの位置、エントリ、半径、由来を記録したHDF5形式のデータベースが、レイアウト、レポート、受け渡しデータの起点になります。想定されるファイルサイズは計算前に提示され、非常に大きなレイアウトは同等のGDSの約1/160のサイズで保持したうえで、必要な領域だけをGDSとして書き出せます。
読み戻し検証
書き出したGDSは独立したリーダで読み戻し、参照数・半径・位置を配置データと突き合わせて検証します。非常に大きいファイルは一定メモリの内容走査で検証します。
取り込んだ位相マップは、出力時にメタアトムのグリッドへ補間され、設計の外周フリンジに対するサンプリングの妥当性が確認されます。
実行の信頼性と自動化
実行履歴に各実行の設計仕様、結果、生成物、メモを保存し、ワンクリックで設計を再読み込みできます。再起動をまたぐセッション復元、ライブラリ生成のチェックポイントと再開、段階ごとの進捗と所要時間の見積り、計算前のサイズ・規模の警告に対応します。すべての失敗は対処方法を示すコード付きのメッセージとして返り、機械可読な進捗・エラーイベントと、自動化や既存システムへの統合のためのコマンドラインインターフェースを備えます。
検証済みスケール
検証済みの設計スケール
参照環境(1台のデスクトップワークステーション、同一のエンジンとGUI)で実測した結果です。
| 口径 | メタアトム配置数 | 出力と所要時間 |
|---|---|---|
| 1 mm | 12,566,345 | 402 MBのGDS / 22秒 |
| 10 mm | 1,256,636,857 | 40 GBのGDS / 3〜4時間 |
| 100 mm | 125,663,704,421 | 11.7 GBの配置データベース / 一晩 |
| 200 mm | 502,654,823,345 | 41.3 GBの配置データベース / 約30時間 |
REFERENCE DESIGN
リファレンス設計
| 口径 | 1 mm |
| 焦点距離 | 5 mm |
| 設計波長 | 532 nm |
| 材料 | TiO₂ |
| ピッチ | 250 nm |
RESULTS
測定結果
| 設計Strehl比 | 1.000 |
| 製造後予測Strehl比 | 0.967 |
| 予測焦点位置 | 5.00 mm |
| 集光効率 | 透過パワーの97%が集光コーン内 |
上表はいずれも参照環境での実測値であり、すべての環境で保証される性能ではありません。測定結果は、併記したリファレンス設計の条件に対応する値です。
リファレンス設計における配置・位相・MTF・PSF・光学システム評価の出力例
入力と出力
何を与えると、何が得られるか
INPUT
| 設計仕様 | JSON |
| 位相マップ | .npy / .csv / OpticStudio Grid Phase(.dat) |
| メタアトムライブラリ | HDF5 |
Photonica Metalens Engine
メタレンズ設計エンジン
OUTPUT
| 配置データベース | HDF5 |
| 製造データ | GDSII / ROI GDS |
| OpticStudio連携 | Grid Phase(.dat)/ Binary 2係数 / .lswm / .lmap |
| 解析・自動化 | .npz / .png / 機械可読なイベント・結果データ |
よくあるご質問
Photonica Metalens Engineについてよくいただく質問
いつから利用できますか。
2026年9月のリリースを予定しています。リリース前でも、対象とされている設計内容やワークフローについてのご相談は承っています。
新しいメタアトムライブラリはどのように作成しますか。
Photonicaでは検証済みライブラリを利用できるほか、新しい材料、波長、構造条件に対応する場合はAnsys Lumericalを使用してRCWA解析を行い、メタアトムライブラリを生成できます。半径×高さのスイープに加えて、高さや入射角は同じライブラリファイルに追加でき、チェックポイントと再開に対応します。
どのようなメタアトム形状・入射条件に対応していますか。
ピラー、ホール(膜のエッチング開口)、リング(円環状の壁)に対応し、いずれも本来の形状のまま配置とレイアウト出力まで引き継がれます。斜入射でのs偏光およびp偏光、一軸異方性(複屈折)膜材料にも対応します。
どのような位相プロファイルを利用できますか。外部で作成した位相マップは使えますか。
単焦点(双曲面)、開口分割による二焦点、多項式補正を加えたプロファイルに対応します。外部で作成した位相マップも取り込め、.npy、.csv、OpticStudioのGrid Phase(.dat)を読み込めます。取り込んだ位相マップは出力時にメタアトムのグリッドへ補間されます。
Photonicaではどのような解析ができますか。
配置済みのメタレンズに対して、製造後を想定したStrehl比、PSF、回折限界に対するFWHM、集光効率、スルーフォーカス強度分布、包囲エネルギーとMTF、フィールド角に対するPSF、色収差による焦点移動、遠方界の角度別パワー配分、予測焦点位置、およびPSFを用いたイメージングシミュレーションを数秒で確認できます。
Zemax OpticStudioとはどのように連携しますか。
設計位相をGrid PhaseまたはBinary 2係数として渡し、光学システムとしてStrehl比、PSF、MTF、波面、スポットを評価します。OpticStudioが提示した多項式位相補正はPhotonicaの設計へ合成し、実際のメタアトムライブラリに対して再アセンブリしたうえで再解析できます。配置済みのレンズは.lswmおよび.lmapでAnsysのサブ波長メタレンズプラグインに渡し、検証できます。
大規模なメタレンズでもGDSを生成できますか。データが非常に大きくなる場合は。
口径によらず一定のメモリでストリーム出力します。参照環境での実測では、1 mm口径・12,566,345個の配置に対して402 MBのGDSを22秒で出力しています。想定ファイルサイズは計算前に提示され、非常に大きなレイアウトは配置データベースとして保持し(同等のGDSの約1/160のサイズ)、必要な領域だけをROI GDSとして数秒で書き出せます。
ご相談前にお知らせいただけると助かること
- 口径・焦点距離・設計波長
- 材料と想定しているピッチ
- フィールド条件と評価したい指標
- 製造プロセスの制約(エッチング深さ、アスペクト比)
- 想定しているスケジュール
お伝えいただけない情報があっても構いません。差し支えのない範囲で結構です。
対象とするメタレンズの設計条件をお聞かせください
口径・焦点距離・設計波長・材料と、想定している設計規模をお知らせいただければ、デモの内容をご相談のうえご案内します。




