設計課題
スケールの異なる二つの問題を、往復しながら解く
単位構造(メタアトム)の応答は波長スケールの厳密な電磁場解析が必要ですが、レンズ全体は光学系としての性能で評価しなければなりません。この二つを行き来する設計データの管理が、実務上のボトルネックになります。
マルチスケールの構成
スケールごとに、担当するツールが異なる
ナノスケールの電磁応答から光学系としての性能、そして製造条件まで、各スケールの結果を次のスケールへ受け渡しながら設計を進めます。
メタアトム
代表的なメタアトム構造
メタレンズを構成するサブ波長構造(メタアトム)の形状は、要求される位相・偏光応答などの光学要件、材料系、そして加工できる寸法条件によって決まります。ピラー、ホール、リングは偏光に依存しない位相制御に、フィン、楕円、クロスのような異方的な構造は偏光に応じた応答を利用する設計に用いられます。いずれもRCWA/FDTDによる単位構造の解析を経て、位相・透過率ライブラリとして扱います。
収録:ピラー / リング / ホール / フィン / 楕円 / クロス(3Dレンダリング。画像を選ぶと拡大表示)。構造ファミリーの例であり、実際に使用するライブラリは材料・波長・製造条件ごとに個別に整備します。
エンジニアリング要件
設計を成立させるために満たすこと
どの工程から着手する場合でも、最終的にこの五つが揃っていなければ、光学系として成立したとは言えません。
設計・シミュレーションワークフロー
単位構造の解析から、製造データまで
ユニットセル設計条件の定義
対象波長を前提に、材料・形状・ピッチ・高さを決めます。掃引するパラメータの範囲と刻みも、この段階で定義します。
生成物 / 設計条件・掃引パラメータ
RCWA/FDTDによる電磁解析
Ansys Lumericalのソルバで、周期境界のもとで寸法ごとの複素透過係数を求めます。周期構造の掃引はRCWA、非周期な構造や近接効果の検証はFDTDが向きます。
生成物 / 寸法ごとの複素透過係数
位相・透過率ライブラリ構築
掃引結果を、寸法と位相・透過率の対応表(メタアトム応答ライブラリ)としてまとめます。位相の被覆範囲、透過率が落ちる領域、製造条件に合う高さスライスをここで把握します。
生成物 / 位相・透過率ライブラリ
位相から形状へのマッピング
目標位相プロファイルを定義し、ライブラリを介して各位置の構造寸法に割り付けます。加工制約を外れる寸法は、この段階で候補から外します。
生成物 / 位置ごとの構造寸法マップ
大規模レイアウト生成
レンズ全面の構造配置を生成し、達成位相、透過率、位相誤差、ライブラリ使用状況を配置レポートで確認します。素子数が数百万から数十億に達するため、生成と検証は自動化した工程として組みます。
生成物 / レイアウトデータ(GDS)
光学系での検証
メタレンズ設計データをAnsys Zemax OpticStudioでの光学系評価につなぎ、光学系に組み込んだ状態で結像性能と収差を評価します。仕様を外れた場合は目標位相の定義に戻ります。
生成物 / 光学系モデル・結像性能
製造データの受け渡し
レンズ全面のレイアウト、形状割り当て、製造関連パラメータ、GDS/製造レイアウトデータを製造工程に渡します。守るべき制約は加工方法によって変わるため、条件は個別に確認します。
生成物 / GDS・製造用レイアウト・寸法条件
工程はプロジェクトにより異なります。既に位相設計やライブラリをお持ちの場合は、途中の工程から始めることもできます。
関連する解析技術
各工程を支える解析手法
手法そのものの原理と適用範囲は、解析技術のページで解説しています。
関連製品
各工程で使用する製品
製品ごとの機能と対応範囲は、それぞれの製品ページに記載しています。
Photonica Metalens Engine
メタアトム応答ライブラリからレイアウトまでの設計ワークフローを担います。Ansys Lumerical RCWA/FDTDの解析結果から応答ライブラリを構築し、目標位相の定義、位相から形状へのマッピング、メタアトム配置、大規模レイアウト生成、内蔵の配置検証、GDS/製造データの出力までを扱います。
対応工程 / 03-05・07(+内蔵評価)
Zemax OpticStudio
光学系としての評価・最適化を担います。メタレンズ設計データを受け取り、実際の光学系に組み込んだ状態で結像性能と収差を評価・最適化します。
対応工程 / 06
ファウンドリ・製造
設計データを製造につなぐ
設計工程の出力は、レンズ全面のレイアウトデータと、それを成立させる寸法条件です。製造に進む際は、この二つが加工方法の制約と一致しているかを確認する必要があります。線幅、アスペクト比、側壁角、面内均一性のうちどれが効くかは、対象波長と材料、そして選択する加工方法によって変わります。
製造制約は設計の最初から考慮します。最小加工寸法、形状の限界(高さ・アスペクト比・側壁角)、ピッチと構造間隔、材料とプロセスの適合性、製造可能な構造ファミリー、ファウンドリのプロセスルールとの整合は、メタアトムライブラリの選択と位相から形状へのマッピングの段階で効きます。
製造への受け渡しには、レンズ全面のレイアウト、位置ごとの形状割り当て、製造関連パラメータ、GDS/製造レイアウトデータが含まれます。最終的な製造可能性は、材料、形状、波長、そしてファウンドリのプロセスによって決まります。
加工方法および実施の可否は、対象波長・材料・構造寸法をもとに個別に判断します。標準化された工程があるわけではないため、設計データの受け渡し条件の整理からご相談ください。
関連技術情報
関連する資料とソリューション
対象波長・材料・ピッチから、ご相談ください
設計の現在地(位相設計の有無、目標仕様、製造の予定)をお知らせいただければ、適切な進め方をご提案します。






