どういう手法か
どの指標で見るかを、先に決める
OpticStudioでは、結像性能の評価はAnalyzeタブのImage Qualityというグループにまとめられています。このグループには、結像系とアフォーカル系の設計に使う解析、すなわち光線追跡のデータ、収差のデータ、波面、点像分布関数などが集まっています。単独の機能の名前ではなく、機能のまとまりの名前です。
グループは8つの小分類に分かれます。光線とスポット、収差、波面、点像分布関数、MTF、RMS、包含エネルギー、拡張シーンの解析です。この頁では、専用の解説頁をもたないものを中心に扱い、空間周波数ごとのコントラストと、波面そのものの評価については、それぞれの頁に案内します。
指標は、幾何光線にもとづくものと、回折にもとづくものに大きく分かれます。前者は光線がどこに落ちるかを表し、後者は波動としての強度分布を表します。どちらを使うべきかは、その系が回折限界にどれだけ近いかで決まります。
仕組み
収差レベルと評価目的・計算条件に応じて、幾何光学と回折ベースの指標を使い分ける
選択を決めるのは、収差の大きさだけではありません。収差レベル、評価の目的、そして計算条件の3つで決まります。収差が大きい系では、光線がどこに落ちるかが性能をほぼ決めるため、スポットダイアグラム、光線収差図、幾何的なMTF、幾何的な包含エネルギーが有効です。系が回折限界に近づくと、光線の広がりだけでは性能を語れなくなり、点像分布関数やストレール比のような回折にもとづく指標に移ります。評価の目的も効きます。コントラストを問うのか、エネルギーの割合を問うのか、実際の見えかたを問うのかで、選ぶ指標は変わります。計算条件も効きます。F値、像面の傾き、射出瞳の歪み、標本の細かさによっては、回折の計算そのものが成り立たないことがあります。
収差レベルについては、具体的な目安がいくつかあります。スポットダイアグラムでは、すべての光線がエアリーディスクの内側に十分収まっていれば回折限界とみなせます。回折にもとづくMTFは、波面誤差がおよそ10波長を超えたら幾何的なMTFに切り替えます。画像シミュレーションは、回折限界の20倍を境に、回折による点像分布から幾何的な点像分布へ自動的に切り替わります。ゼルニケ係数から求めるストレール比の近似が使えるのは、単色で、かつストレール比がおよそ0.10より高い場合だけです。これらは目安であり、評価の目的と計算条件を合わせて判断してください。
この手法の強み
この手法が選ばれる理由
問いに合った指標を選べる
ぼけの大きさ、エネルギーの集まりかた、点像の形、実際の見えかたと、知りたいことに応じた指標がそろっています。同じ設計を複数の見かたで確かめられます。
指標の選択に手がかりがある
エアリーディスクへの収まり、波面誤差およそ10波長、回折限界の20倍、ストレール比およそ0.10という具体的な目安があります。評価の目的と計算条件を合わせて考えれば、指標の選択を勘に頼らずに済みます。
視野と波長と焦点を走査できる
RMS波面誤差やRMSスポット半径、ストレール比を、視野、波長、焦点ずれの関数として描けます。視野全体を2次元の地図として見ることもできます。
使いどころ
向く場合と、向かない場合
向いている場面
→ どの指標で性能を語るべきかを、先に整理したいとき
→ 収差が大きい段階で、ぼけの大きさを手早く比べたいとき
→ 検出器の画素や口径に対して、エネルギーの集まりかたを知りたいとき
→ 視野、波長、焦点ずれに対する性能の変化を1つの数値で追いたいとき
→ 実際のシーンがどう写るかを示したいとき
別の手法が適している場面
空間周波数ごとのコントラスト:解像の仕様を空間周波数に対するコントラストで表す場合は、変調伝達関数の頁に進んでください。3通りの計算方法と、それぞれの前提を扱っています。
波面の形そのものと収差の内訳:何をどれだけ直せばよいかを知りたい場合は、波面解析の頁に進んでください。参照球面からのずれ、ゼルニケ係数、ザイデル係数を扱っています。
コヒーレントなビームの伝搬:レーザービームの伝搬、ファイバ結合、開口の縁で生じる回折のリングは、結像性能の指標では表せません。場そのものを面から面へ運ぶ物理光学伝搬に移ります。
意図しない光の評価:ゴーストや内面散乱のように、結像に寄与しない光が問題になる場合は、迷光解析が受け持ちます。
適用対象
代表的な適用対象
カメラ・撮像光学系の評価
視野全体でのぼけの大きさ、エネルギーの集まりかた、見えかたを合わせて評価します。
検出器の画素に合わせた設計
包含エネルギーを使い、画素の大きさに対してどれだけの光が入るかを設計の指標にします。
収差が大きい段階での比較
設計初期に、スポット半径と光線収差図で複数の案を手早く比べます。
見えかたの提示
実写のような画像を作り、仕様の数値ではなく結果として何が見えるかを共有します。
入力と出力
何を与えると、何が得られるか
INPUT
| 設計データ | 面の形状と材料、絞りの設定 |
|---|---|
| 視野と波長 | 定義した視野点と波長。多くの解析は視野と波長ごとに結果を返します |
| 標本の細かさ | 瞳を切る光線格子の細かさ。回折の計算では結果の正しさを左右します |
| 評価面 | 像面、または途中の面 |
| 偏光 | 偏光を考慮するかどうかの設定 |
OUTPUT
| スポットの大きさ | 幾何スポット半径、RMSスポット半径、エアリーディスク半径 |
|---|---|
| 点像分布 | 点光源に対する強度分布と、ストレール比 |
| 包含エネルギー | 基準点からの距離に対する、包含されるエネルギーの割合 |
| RMSの走査 | 視野、波長、焦点ずれに対するRMS波面誤差、RMSスポット半径、ストレール比 |
| 見えかた | ビットマップを入力とした像のシミュレーション結果と、幾何的な結像解析の効率 |
進めかた
実際の進めかた
絞り、視野、波長を決める
評価はこの3つを前提に行われます。どの視野点と波長で仕様を語るかを先に決めます。
幾何の指標で全体を見る
スポットダイアグラムと光線収差図で、収差の大きさと種類の見当をつけます。エアリーディスクとの比較で、回折限界にどれだけ近いかを判断します。
回折の指標に切り替える
回折限界に近い系では、点像分布関数や回折にもとづく包含エネルギーに移ります。標本を細かくして結果が動かなくなることを確かめます。
仕様に対応する指標で締める
コントラストの仕様なら変調伝達関数、エネルギーの仕様なら包含エネルギー、見えかたなら画像シミュレーションというように、仕様の形に合う指標で結論を出します。
回折の計算は標本の細かさに依存します。標本が足りないと不正確であるという警告が出ることがあります。段階的に細かくして、結果が動かなくなる点を確かめてください。なお、スポットダイアグラムはけられた光線を描かず、RMS半径や幾何半径の計算にも使いません。
関連手法との関係
関連する解析手法との役割分担・連成
| 手法 | 関係 | 主な対象 | 使い分け |
|---|---|---|---|
| 結像性能評価(本手法) | 本手法 | 結像性能の全体像 | スポット、点像分布、包含エネルギー、RMSの走査、拡張シーンの評価をまとめて扱います。幾何と回折の切り替えの判断もここに含まれます。 |
| MTF | 補完 | 空間周波数ごとのコントラスト | 解像の仕様を数値にする指標です。3通りの計算方法があり、それぞれ前提が違います。 |
| 波面解析 | 補完 | 収差の内訳と大きさ | 参照球面からのずれを測り、直交多項式に分解します。何を直すべきかを知るための指標です。 |
| 物理光学伝搬 | 代替 | コヒーレントなビームの伝搬 | 複素振幅の場を面から面へ運びます。ファイバ結合やビームウエストの評価は、結像性能の指標ではなくこちらの領域です。 |
対応製品
この手法を提供する製品
結像、照明、レーザー系の設計と解析に使われる商用ソフトウェアです。幾何と回折の両方にもとづく結像性能の評価をそろえ、同じ環境で最適化や公差解析まで続けられます。ライセンス、動作環境、導入についてはこちらをご覧ください。
Ansys Zemax OpticStudio
FAQ
よくある質問
結像性能をどの指標で語るかから、ご相談いただけます
光学系の構成と守りたい仕様をお知らせいただければ、評価の進めかたをご提案します。
