どういう手法か
空間周波数ごとに、残るコントラストを見る
正弦波状の明暗をもつ被写体を結像したとき、像のコントラストは元より下がります。その比を空間周波数の関数として表したものが変調伝達関数です。光学伝達関数の絶対値にあたり、点像分布関数の正規化したフーリエ変換、あるいは複素瞳関数の正規化した自己相関として定義されます。この定義そのものはフーリエ光学の標準的な結果です。
OpticStudioは、この関係をそのまま計算の道筋として使います。波面のデータから点像分布関数が求まり、MTFは瞳関数の自己相関から導かれます。FFTを使う計算は瞳のデータのFFTにもとづき、幾何的な計算は幾何スポットのデータのフーリエ変換として行います。
横軸の単位は、焦点をもつ系では像空間の1ミリメートルあたりのサイクル数、アフォーカル系では物空間の1ミリラジアンあたりのサイクル数です。結果は、タンジェンシャルとサジタルの2方向に分けて表示されます。
仕組み
瞳のデータから、3通りの方法で求める
FFTを使う方法は速いかわりに前提が多くあります。走査的な回折理論が使えるだけF値が大きいこと、点像分布関数が有意なエネルギーをもつ範囲が射出瞳から像面までの距離に比べて十分小さいこと、射出瞳が入射瞳に対して大きく歪んでいないこと、そして点像分布関数を表せるだけ標本が細かいことです。射出瞳が大きく引き伸ばされる系では、ホイヘンス法に切り替えます。
ホイヘンス法はFFTにもとづきません。必要な前提は、走査的な回折理論が使えるだけF値が大きいことと、標本が十分細かいことだけです。傾いた像面、射出瞳の大きな歪み、主光線が追跡できない構成、複数コンフィギュレーションの合算といった場面で使います。幾何的な方法は回折MTFへの近似であり、収差が多い系で有効です。波面誤差がおよそ10波長を超えたら、幾何的な方法に切り替えます。面の散乱によるコントラストの低下を含められるのも、この方法だけです。
この手法の強み
この手法が選ばれる理由
仕様として扱いやすい
空間周波数に対するコントラストという形は、解像の要求をそのまま数値にできます。回折限界の曲線を重ねて、余裕がどれだけあるかを示せます。
前提に応じて方法を選べる
FFTを使う速い方法、前提の少ないホイヘンス法、収差が多い系に向く幾何的な方法の3つがあり、系の性質に応じて選べます。
最適化の目標にできる
タンジェンシャル、サジタル、その平均を返すオペランドが、3つの計算方法それぞれについて用意されています。矩形波に対する応答を返すオペランドもあります。
使いどころ
向く場合と、向かない場合
向いている場面
→ 解像の仕様を、空間周波数に対するコントラストで表したいとき
→ 回折限界に対してどれだけ余裕があるかを示したいとき
→ 焦点ずれに対するコントラストの落ちかたから、焦点深度や組み立ての許容を見積もりたいとき
→ 視野の中でコントラストがどう変わるかを把握したいとき
→ 指定した周波数のコントラストを、最適化の目標に入れたいとき
別の手法が適している場面
収差が非常に大きい系:波面誤差がおよそ10波長を超える系では、回折にもとづく計算は適しません。幾何的な計算に切り替えるか、スポット半径のような幾何の指標に戻ります。
エネルギーの集まりかたを知りたいとき:この指標が答えるのはコントラストであって、エネルギーの割合ではありません。画素や口径に入る光の割合が問題なら、包含エネルギーを使います。
何を直せばよいかを知りたいとき:コントラストが落ちていることは分かっても、その原因は分かりません。収差の内訳を知るには、波面解析に進みます。
コヒーレントなビーム:レーザービームの伝搬やファイバ結合には当てはまりません。場そのものを運ぶ物理光学伝搬に移ります。
適用対象
代表的な適用対象
結像レンズの仕様検証
要求される空間周波数でのコントラストが仕様を満たすかを、視野全体で確かめます。
焦点深度と組み立て許容の見積もり
焦点ずれに対するコントラストの落ちかたから、許容できる位置ずれを見積もります。
収差が大きい系の高速な比較
幾何的な計算を使い、設計案を短時間で比べます。面の散乱の影響も含められます。
ニアアイ光学系の評価
傾いた面や特殊な瞳をもつ構成では、前提の少ない計算方法を選んで評価します。
入力と出力
何を与えると、何が得られるか
INPUT
| 標本の細かさ | 瞳を切る光線格子の細かさ。ホイヘンス法では像側の標本と刻み幅も指定します |
|---|---|
| 最大空間周波数 | 横軸の上限。仕様で問題になる周波数まで取ります |
| 視野と波長 | 評価する視野点と波長 |
| 表示の種類 | 変調、実部、虚部、位相、矩形波に対する応答 |
| 派生の設定 | 焦点ずれの幅と刻み数、視野の密度と走査方向、評価する周波数の指定 |
| 幾何計算の設定 | 回折限界の曲線を掛けるかどうか、面の散乱を含めるかどうか |
OUTPUT
| MTF曲線 | 空間周波数に対するコントラスト。タンジェンシャルとサジタルに分かれます |
|---|---|
| 回折限界の曲線 | 比較の基準となる曲線を重ねて表示できます |
| 焦点ずれに対する変化 | 指定した周波数でのコントラストを、焦点位置の関数として |
| 視野に対する変化 | 指定した複数の周波数でのコントラストを、像高の関数として |
| 2次元の分布 | 視野の地図、面上の分布、瞳内でのコントラストの失われかたの地図 |
進めかた
実際の進めかた
仕様の周波数を決める
検出器の画素や要求される解像から、評価すべき空間周波数を決めます。横軸の上限もここで決まります。
計算方法を選ぶ
まずFFTを使う方法で見ます。前提が崩れている場合はホイヘンス法へ、波面誤差が大きい場合は幾何的な方法へ切り替えます。
標本を細かくして収束させる
標本を段階的に細かくし、曲線が動かなくなることを確かめます。標本不足による不正確さの警告に注意します。
視野と焦点で走査する
仕様の周波数を指定して視野に対する変化を見て、焦点ずれに対する変化から焦点深度と組み立ての許容を見積もります。
FFTを使う方法の前提が成り立っているかは、余弦空間でのスポット分布がほぼ一様かどうかで確かめられます。傾いた像面では、FFTを使う方法とホイヘンス法で結果が異なります。ホイヘンス法の計算面は像面に垂直な面であるのに対し、FFTを使う方法の計算面は主光線に垂直な面だからです。傾きが1方向だけであれば補正されますが、それ以外はホイヘンス法を使ってください。
関連手法との関係
関連する解析手法との役割分担・連成
対応製品
この手法を提供する製品
結像、照明、レーザー系の設計と解析に使われる商用ソフトウェアです。3通りの方法による変調伝達関数の計算に加えて、波面や点像分布の評価、最適化、公差解析を同じ環境に備えます。ライセンス、動作環境、導入についてはこちらをご覧ください。
Ansys Zemax OpticStudio
FAQ
よくある質問
解像の仕様づくりから、ご相談いただけます
光学系の構成と要求される解像をお知らせいただければ、評価の進めかたをご提案します。
