どういう手法か
断面の固有値問題として、モードを解く
構造が伝搬方向に一様であると仮定すると、電磁界は断面内の分布と、伝搬方向に位相が進む項との積で表せます。この仮定によってマクスウェル方程式は断面上の2次元固有値問題に帰着し、固有値として伝搬定数が、固有ベクトルとしてモードの場分布が求まります。
断面は三角形の要素で分割されます。三角形の最大辺長は自由空間波長を基準に決まり、材料や領域を指定した細分化ができます。要素の上で使う基底関数の多項式次数も選べます。
実効屈折率は伝搬定数と角周波数から求まります。損失のある材料では、実効屈折率の虚部から伝搬損失が得られます。各モードの場は、運ぶパワーが1Wになるように正規化されます。
仕組み
伝搬方向の一様性を利用し、断面の固有値問題として解く
この手法は、構造が伝搬方向に一様であることを前提に置きます。その前提のもとでは電磁界を断面内の分布と伝搬方向に位相が進む項との積で表せるため、3次元の問題は断面の2次元問題になります。有限要素法ではこれを、断面を覆う三角形要素の上の一般化固有値問題として離散化します。固有値は実効屈折率の2乗にあたる量で、解は離散的なモードの集合として得られます。
ベクトル場を扱う有限要素の定式化には、非物理的な偽解が数値スペクトルに混じるという固有の難しさがあります。横方向の成分に辺要素を、伝搬方向の成分に節点要素を使う定式化は、混成モードを正確に表しながら偽解を抑える方法として広く使われています。これは手法一般についての知見です。
この手法の強み
この手法が選ばれる理由
形状への追随
三角形の非構造メッシュは材料の界面に沿って配置できます。直交格子の解法が矩形以外の断面で不利になるのに対し、複雑な境界をそのまま表現できます。
偽解の抑制
辺要素にもとづく定式化は非物理的な偽解を大きく減らし、計算電磁気学の標準になっています。
次数による精度向上
メッシュを細かくするかわりに、基底関数の多項式次数を上げることでも精度を高められます。
使いどころ
向く場合と、向かない場合
向いている場面
→ 伝搬方向に一様な構造の断面から、導波モードの実効屈折率や損失、実効面積を求めたいとき
→ 高屈折率の基板へ漏れる損失を、PML境界を使って定量したいとき
→ 曲がり導波路のモードを、曲率半径を指定して求めたいとき
→ 熱や電気の解析で得た屈折率の変化を反映して、モードを解き直したいとき
→ 回路シミュレーションに渡す実効屈折率と群屈折率を用意したいとき
別の手法が適している場面
伝搬方向に一様でない構造:この手法は、断面内の分布と伝搬方向の位相項の積という形を仮定しています。伝搬方向に形状が変わる素子は対象外です。
3次元の散乱や放射:モードではなく素子全体の散乱や放射を知りたい場合は、解析領域を体積として離散化する手法が必要です。
矩形に近い単純な断面:断面が直交格子で素直に表せるなら、直交格子のモード解析でも足ります。周波数掃引から群遅延や分散を一度に得る機能もそちらにあります。
波長依存性を一度に得たいとき:モードは一つの周波数ごとに解かれます。群屈折率のような量は、波長を変えて複数回計算して求めます。
適用対象
代表的な適用対象
シリコンフォトニクス導波路
SOI導波路のモード分布、実効屈折率、損失、TE・TM成分の比率、実効面積を求めます。
基板への漏れ損失
PML境界を使い、高屈折率の基板へ放射して失われる分を損失として求めます。
熱光学位相シフタ
熱解析で得た温度分布を屈折率の変化に換算し、投入電力に対する位相の変化を求めます。
回路モデル用のパラメータ抽出
実効屈折率と群屈折率を求め、回路シミュレーションの導波路素子に渡します。
入力と出力
何を与えると、何が得られるか
INPUT
| 断面形状 | 基本形状の組み合わせ、レイヤービルダー、GDSII・STL・STEPからの取り込み |
|---|---|
| 材料 | 屈折率のデータ。外部の解析で求めた屈折率の変化を与えることもできます |
| 解析条件 | 波長または周波数、求めるモードの本数、探索する実効屈折率、曲がり導波路の曲率半径 |
| メッシュ | 波長あたりの辺の数、基底関数の多項式次数、三角形の最小角 |
OUTPUT
| 実効屈折率と損失 | モードごとの伝搬定数と実効屈折率、および伝搬損失(dB/m) |
|---|---|
| モード分布 | 断面上の電界、磁界、ポインティングベクトルの分布 |
| モードの性質 | TE・TM偏光成分の比率と実効面積 |
| メッシュ情報 | 節点の座標、要素の接続情報、多項式次数 |
進めかた
実際の進めかた
材料を定義する
コア、クラッド、基板など、断面を構成する材料を定義します。
断面形状を作り、材料を割り当てる
伝搬方向に一様とみなせる構造の断面を作り、定義済みの材料を割り当てます。
解析領域とメッシュを決める
解析領域を設定し、波長あたりの辺の数と多項式次数を決めます。既定値は辺の数が1、多項式次数が3です。
モードを解いて評価する
波長、求めるモードの本数、探索する実効屈折率を与えて計算し、実効屈折率、損失、偏光成分の比率、実効面積を評価します。
既定の設定は粗いものです。Ansysの例では、波長あたりの辺の数を5、多項式次数を10まで上げて、参照値との差が0.005%以内に収まることを確認しています。細分化と次数を振って、結果が動かなくなる点を確かめてください。
関連手法との比較
関連する解析手法との使い分け
| 手法 | 関係 | 主な対象 | 使い分け |
|---|---|---|---|
| FEEM(本手法) | 本手法 | 伝搬方向に一様な構造の断面 | 三角形の有限要素で断面を分割し、固有値問題を解いてモードの伝搬定数と場分布を求めます。各モードは運ぶパワーが1Wになるように正規化されます。 |
| FDE | 代替 | 直交格子で表せる断面 | 直交格子の上で同じ断面の固有値問題を解きます。正規化は電界強度の最大値が1になる形で、周波数掃引の機能を備えます。 |
| DGTD | 補完 | 曲面を含む3次元構造 | 同じ有限要素系ですが、3次元のマクスウェル方程式を時間領域で解きます。 |
| FDTD | 補完 | 波長スケールの3次元構造 | 解析領域を体積として離散化し、スペクトルや遠方界、Sパラメータを求めます。 |
対応製品
この手法を提供する製品
有限要素固有モード解析を提供する商用ソフトウェア環境です。電荷輸送、熱輸送、多重量子井戸、3次元電磁場の各ソルバーを同じ環境に備え、熱や電気の解析結果をモード解析に反映できます。ライセンス、動作環境、導入についてはこちらをご覧ください。
Lumerical Multiphysics
FAQ
よくある質問
導波路断面のモード解析から、ご相談いただけます
断面構造と評価したい特性をお知らせいただければ、適切な手法と製品をご提案します。
