どういう手法か
図面に公差を入れる根拠をつくる
公差を厳しくすれば性能は保たれますが、加工と組立のコストが上がります。緩めればコストは下がるものの、仕様を満たさない個体が増えます。どこを厳しくし、どこを緩めてよいかは、感度を知らなければ決められません。
感度解析は、公差を与えた項目を一つずつ、その最大値と最小値まで振り、基準となる評価量の変化を項目ごとに取り出します。モンテカルロ解析は、公差を与えたすべての項目を、定義した公差モデルとその統計分布に従って試行ごとに標本化し、性能の統計分布と歩留まりを与えます。
組立時にどの要素を動かして性能を回復させるかも、補償量として評価に含められます。調整を前提にすれば、より緩い公差でも仕様を満たせる場合があります。
仕組み
一項目ずつの感度と、分布に従う同時サンプリング
感度解析は、各公差の極値を一項目ずつ与え、そのときの基準となる評価量の変化を計算します。得られるのは項目ごとの寄与であり、どの誤差が効いているかを順位として読み取れます。極値を一つずつ与える構成上、複数の誤差が同時に生じたときの相互作用は含まれません。
モンテカルロ解析は、定義した公差モデルに従って統計的な標本を生成します。一回の試行では、公差を指定したすべての項目が、それぞれの許容範囲と分布から無作為に設定されます。試行を重ねて得られるのは、量産時の性能の統計分布と、仕様を満たす割合です。分布は正規分布、一様分布、放物線分布から選べ、既定は許容範囲の最大と最小の間に標準偏差四つ分の幅を取る正規分布です。全項目を同時に動かす計算というより、どの分布を仮定するかが結果を決める解析です。
この手法の強み
この手法が選ばれる理由
寄与を分離できる
一項目ずつ振る解析は、どの誤差が効いているかを順位として示します。厳しくすべき項目と緩めてよい項目の切り分けが、根拠を持ってできます。
量産の姿を数で表せる
公差を指定した全項目を分布から標本化して試行を重ねることで、性能の統計分布と、仕様を満たす割合としての歩留まりが得られます。
組立調整を織り込める
組立時に動かせる要素を補償量として与えられるため、調整を前提とした現実的な性能を評価できます。
使いどころ
向く場合と、向かない場合
向いている場面
→ 公称設計を製造に渡す前に、実際に組み上げたときの性能を見積もりたいとき
→ どの誤差項目を厳しくすべきかを特定したいとき
→ 仕様を満たす割合、すなわち歩留まりを設計段階で知りたいとき
→ 性能の上限が決まっていて、それを満たす最も緩い公差を求めたいとき
→ 照明系や迷光のように、検出器の値を評価関数として扱う系のばらつきを見たいとき
別の手法が適している場面
公称性能の作り込み:誤差を入れない状態で性能そのものを上げる段階は、評価関数による最適化が扱います。
熱や構造による変形:製造ばらつきではなく物理的な荷重による変形は、熱・構造の解析結果を光学面に写す進めかたが用意されています。統計的な公差とは扱いが異なります。
目的外経路そのものの評価:散乱やゴーストの寄与を経路ごとに分解するのは、迷光解析の領域です。
光回路のプロセスばらつき:光集積回路のプロセスばらつきは、回路レベルの解析環境で扱う領域です。
適用対象
代表的な適用対象
カメラ・撮像光学
量産レンズの公差配分と歩留まりを検討します。
分光器
測定精度を保証するための公差配分を決めます。
傾きと偏心を含む系
素子の傾きと偏心を座標のずれとして与え、影響を評価します。
照明・迷光の評価
検出器の値を評価関数として、経路を仮定しない系のばらつきを見ます。
入力と出力
何を与えると、何が得られるか
INPUT
| 公称設計 | 最適化を終えた設計データ |
|---|---|
| 公差項目 | 曲率半径、厚み、面の偏心と傾き、素子の偏心、屈折率、アッベ数など |
| 統計的な条件 | 項目ごとの許容範囲と分布、モンテカルロ試行の回数 |
| 評価と補償 | 基準とする評価量、補償量として動かせる要素とその範囲 |
OUTPUT
| 感度 | 項目ごとの、極値における評価量の変化 |
|---|---|
| 許容値 | 決めた上限を満たす、項目ごとの最も緩い公差値 |
| 統計分布 | モンテカルロ解析による性能の分布と歩留まり |
| 摂動モデル | 試行ごとに生成された設計データ。悪い個体を開いて原因を追えます |
進めかた
実際の進めかた
公差項目を洗い出す
曲率半径、厚み、偏心と傾き、屈折率、素子公差を列挙し、機構上で重複する項目を整理します。
公差値と分布を実情に合わせる
加工先と組立工程の実力値をもとに許容範囲を与えます。既定の分布が工程の実態と合わない場合は分布を変更します。
補償量を定義する
組立時に動かせる要素と、その調整範囲を指定し、意図どおり効いているかを確認します。
感度解析とモンテカルロ解析を実行する
支配的な項目を特定したうえで、公差モデルに従って試行を重ね、性能の統計分布と歩留まりを求めます。
補償量の置き方が非現実的だと、歩留まりを実際より高く見積もってしまいます。手順の中で最も時間を使うべきなのは03です。
関連手法との比較
関連する解析手法との使い分け
| 手法 | 関係 | 主な対象 | 使い分け |
|---|---|---|---|
| 公差解析(本手法) | 本手法 | 製造・組立のばらつき | 項目ごとの感度と、公差モデルに従う統計分布によって誤差の影響を定量化し、歩留まりを見積もります。 |
| シーケンシャル光線追跡 | 前段 | 公称値での結像性能 | 公差解析の入力となる公称設計を最適化します。公称性能を固めてから誤差を入れます。 |
| ノンシーケンシャル光線追跡 | 前段 | 検出器の値で評価する系 | 経路を仮定しない系のモデルを与えます。基準には組み込みの指標ではなく利用者が定義した評価関数を使います。 |
| 迷光解析 | 補完 | 目的外経路の寄与 | 公差解析は意図した性能のばらつきを、迷光解析は意図しない経路の寄与を扱います。対象が異なります。 |
| Lumerical INTERCONNECT | 代替 | 光回路のプロセスばらつき | 光集積回路のばらつきは回路レベルで扱います。レンズ系の公差解析とは対象が異なります。 |
対応製品
この手法を提供する製品
公差解析は、この製品に組み込まれた解析機能です。面順を仮定した系にも、経路を仮定しない系にも適用でき、最適化に使った評価関数をそのまま基準として使えます。ライセンス、動作環境、導入についてはこちらをご覧ください。
Ansys Zemax OpticStudio
FAQ
よくある質問
公差配分の考え方から、ご相談いただけます
設計データと守りたい仕様をお知らせいただければ、公差解析の進めかたをご提案します。
