どういう手法か
導波路の断面から、モードを求める
光が導波路をどう伝わるかは、その断面が支える離散的なモードで決まります。この手法は、導波路の断面メッシュの上でマクスウェル方程式を解き、モードの空間分布と周波数依存性を求めます。
得られるのは、モードごとの場分布、実効屈折率、損失です。実効屈折率は伝搬定数と角周波数から定義され、複素屈折率をもつ材料では虚部が伝搬損失になります。場は電界強度の最大値が1になるように正規化されます。
断面は矩形のメッシュで切ります。既定は一様ですが、グレーディング、局所的な細分化、材料の界面を滑らかに扱うコンフォーマル処理も選べます。周波数掃引の機能を備えており、群遅延や分散を続けて求められます。
仕組み
断面メッシュ上で有限差分離散化し、疎行列の固有値問題として解く
この手法は、構造が伝搬方向に一様であるという前提から出発します。その前提のもとで電磁界を断面内の分布と伝搬方向に位相が進む項の積に分けると、3次元の問題は断面上の2次元問題になります。有限差分法ではこれを断面を覆うメッシュの上で離散化し、伝搬定数の2乗を固有値とする行列の固有値問題に書き換えます。得られる行列は疎であり、疎行列向けの解法で解きます。
モードの選び出しは自動ではありません。解く波長、返す試行モードの本数、探索の起点になる実効屈折率を与える必要があります。対象の近くにある物理的なモードを取りこぼさないよう、試行モード数は大きめにとります。対称境界を使うと、片方の偏光しか残らないことがある点にも注意が要ります。
この手法の強み
この手法が選ばれる理由
断面だけで決まる計算量
計算量を決めるのは断面のメッシュであり、素子の長さや時間発展ではありません。1つの周波数について1回の固有値計算で、支持されるモードがまとめて得られます。
周波数掃引の内蔵
掃引の機能が組み込まれており、群屈折率、群速度、群遅延、分散を波長の関数として求められます。特定のモードを追跡しながら掃引することもできます。
曲がり導波路と漏れ損失
曲率半径、曲げの向き、曲げの基準点を指定して曲がり導波路のモードを解けます。PML境界を使うと、曲げによって放射して失われる分を損失として評価できます。
使いどころ
向く場合と、向かない場合
向いている場面
→ 伝搬方向に一様な導波路の断面から、実効屈折率、群屈折率、分散、損失を求めたいとき
→ 波長を振って、群遅延や分散の波長依存性をまとめて得たいとき
→ 曲がり導波路のモードと、曲げによる放射損失を評価したいとき
→ 2つのモードの重なりから、接続部の結合の割合を見積もりたいとき
→ 回路シミュレーションに渡す導波路素子のパラメータを抽出したいとき
別の手法が適している場面
伝搬方向に形が変わる素子:この手法が返すのは、固定した断面が支えるモードです。テーパやMMIのように伝搬方向に形が変わる素子の透過や反射を知りたい場合は、モードを基底にして長さ方向をつなぐ手法が必要です。
平面内を広く伝搬する構造:リング共振器やAWGのように、平面内を伝搬軸を決めずに光が回る構造には向きません。垂直方向をたたみ込んで平面内を時間領域で解く手法のほうが適します。
3次元の散乱や放射:素子全体の散乱、遠方界、Sパラメータを求めたい場合は、解析領域を体積として離散化する手法が必要です。
モードの自動選別を期待する場合:求めたいモードは自動では選ばれません。試行モードの本数と探索する実効屈折率を与える必要があり、対称境界の選びかたによっては片方の偏光しか残らないことがあります。
適用対象
代表的な適用対象
シリコンフォトニクス導波路の特性評価
SOI導波路のモード分布、実効屈折率、損失、偏光成分の比率、実効面積を求めます。
分散の設計
波長を振って群屈折率と分散を求め、導波路の寸法を決める根拠にします。
曲がり導波路の損失見積もり
曲率半径を指定してモードを解き、伝搬損失と、直線部との接続における重なりの不一致を分けて評価します。
回路モデル用のパラメータ抽出
実効屈折率と群屈折率の波長依存性を求め、回路シミュレーションの導波路素子に渡します。
入力と出力
何を与えると、何が得られるか
INPUT
| 断面形状 | 伝搬方向に一様とみなせる導波路の断面と、各領域の材料 |
|---|---|
| 材料 | 屈折率のデータ。異方性材料や複素屈折率も扱えます |
| 解析条件 | 波長または周波数、試行モードの本数、探索する実効屈折率の値または範囲 |
| メッシュ | メッシュ数または最大メッシュ幅、グレーディング係数、最小メッシュ幅、局所的な細分化 |
| 境界条件 | PML、金属(PEC)、PMC、周期、対称・反対称 |
| 曲がり | 曲率半径、曲げの向き、曲げの基準点 |
OUTPUT
| 実効屈折率と損失 | モードごとの実効屈折率と、複素屈折率をもつ材料での伝搬損失(dB/m) |
|---|---|
| モード分布 | 断面上の電界と磁界の各成分 |
| モードの性質 | TE偏光成分の比率、導波TE・TM比率、実効面積 |
| 周波数掃引の結果 | 実効屈折率、損失、群屈折率、群速度、群遅延、分散、伝搬定数の波長依存性 |
| モード間の重なり | 2つのモードの重なりと、そこから求まる結合の割合 |
進めかた
実際の進めかた
断面と材料を定義する
伝搬方向に一様とみなせる断面を作り、コア、クラッド、基板などの材料を割り当てます。
解析領域とメッシュ、境界条件を決める
モードの染み出しが境界に届かない広さの領域をとり、メッシュ幅と境界条件を設定します。放射を含めるならPMLを使います。
モードを解いて選ぶ
波長、試行モードの本数、探索する実効屈折率を与えて計算し、モード一覧から目的のモードを選びます。
波長を振って特性を得る
選んだモードを追跡しながら周波数掃引を行い、実効屈折率、群屈折率、分散、損失の波長依存性を求めます。
メッシュを細かくして実効屈折率と損失が動かなくなることを確かめてください。解析領域が狭いとモードの裾が境界で反射し、結果が変わります。分散を精度よく求めたい場合は、追加の周波数点で計算する設定を使います。
関連手法との比較
関連する解析手法との使い分け
| 手法 | 関係 | 主な対象 | 使い分け |
|---|---|---|---|
| FDE(本手法) | 本手法 | 伝搬方向に一様な導波路の断面 | 断面メッシュ上で有限差分離散化し、固有値問題としてモードの実効屈折率と場分布を求めます。周波数掃引で分散まで得られます。 |
| FEEM | 代替 | 曲面を含む断面 | 三角形の有限要素で同じ断面の固有値問題を解きます。材料の界面に沿ってメッシュを配置でき、正規化は各モードが運ぶパワーを基準にします。 |
| EME | 後段 | 伝搬方向に形が変わる長い素子 | 断面ごとのモードを基底に取り、散乱行列をつないで素子全体の伝搬を求めます。そのモード計算にはこの手法の解法が使われます。 |
| varFDTD | 代替 | 平面型の広い構造 | 垂直方向を実効屈折率にたたみ込み、2次元の時間領域計算で平面内の伝搬を扱います。 |
| FDTD | 補完 | 波長スケールの3次元構造 | 解析領域を体積として離散化し、スペクトル、遠方界、Sパラメータを求めます。 |
対応製品
この手法を提供する製品
導波路と光結合の解析に向けた商用ソフトウェア環境です。有限差分固有モード解析に加えて、固有モード展開法と2.5D変分FDTD法のソルバーを同じ環境に備え、断面のモードから素子全体の伝搬までを続けて扱えます。ライセンス、動作環境、導入についてはこちらをご覧ください。
Lumerical MODE
FAQ
よくある質問
導波路のモード解析から、ご相談いただけます
断面の構成と評価したい特性をお知らせいただければ、適切な手法と製品をご提案します。
