どういう手法か
温度を解き、光学特性の変化につなぐ
熱源と境界条件から、構造内の温度分布を求めます。対象は固体内の熱伝導で、流体そのものは解きません。材料側の入力は密度、比熱、熱伝導率で、電気伝導を含める場合は導電率も与えます。定常状態と過渡の両方を扱えるため、温度の絶対値だけでなく、定常に達するまでの時間も評価できます。
電気伝導との連成は解の内側で行われます。熱伝導だけを解くモードと、電気伝導を含めて解く電気熱モードがあり、後者では電流によるジュール発熱を熱源として熱伝導方程式に入れ、熱と電気伝導を自己無撞着に解きます。高電流のデバイスで自己発熱を含めたい場合の基本形がこれです。
この手法が解くのは温度場までです。光学特性の変化は、求めた温度分布を光学解析側に温度データとして渡し、屈折率の温度依存モデルで屈折率を更新して解き直すことで評価します。受け渡しは一方向で、光学解析の結果が温度の解に戻ることはありません。つまり熱と光の連成は自己無撞着ではありません。
仕組み
熱の流れを、要素に分けて解く
熱伝導解析は、温度についての一つの偏微分方程式を解く問題です。単位体積あたりの熱容量と温度の時間変化、熱伝導による流入と流出、そして熱源。この三つが釣り合う状態を、対象領域の全体で満たす温度分布を求めます。
領域を有限要素に分割し、温度をメッシュ節点の値として表すと、連続の問題は有限個の未知数についての代数方程式に置き換わります。要素を細かくするほど解は精密になり、その分だけ計算量が増えるという関係になります。
定常状態では時間変化の項を落とした形を解きます。過渡では時間方向にも離散化し、局所打ち切り誤差の許容量にもとづいて時間刻みを調整しながら進めます。いずれの場合も、定式化は対象の時間スケールが材料の緩和時間より十分に長いことを前提としています。
この手法の強み
この手法が選ばれる理由
放熱の与えかたを選べる
温度固定、熱流束、対流、放射を面ごとに組み合わせて与えられるため、実装に近い放熱経路を表現できます。
定常と過渡が同じモデルから
一つの構造記述から、定常の温度分布と、切り替え時の温度の時間変化の両方を求められます。応答の時定数もここから得られます。
発熱と電気伝導を同時に解ける
電気伝導による発熱を熱源として自己無撞着に扱えるため、自己発熱の評価を後処理に頼らずに行えます。
使いどころ
向く場合と、向かない場合
向いている場面
→ ヒーターによる熱光学位相シフタを設計するとき
→ 自己発熱による共振波長のシフトを見積もりたいとき
→ 高密度に実装した素子間の熱クロストークを評価したいとき
→ 切り替えに対する温度の時定数を求めたいとき
→ 光吸収や電流による発熱から温度上昇を求めたいとき
別の手法が適している場面
流れを解きたい:流体そのものは解きません。流体は境界条件を与える役割にとどまるため、流れ場が問題になる場合は熱流体解析が扱う領域です。
半導体のキャリア輸送:電流が半導体中のキャリア輸送で決まる場合は、ドリフト拡散解析の側で熱と連立させます。こちらの電気の扱いは導電体としての伝導までです。
光学応答のみ:温度変化を伴わない光学応答だけであれば、電磁場解析やモード解析で完結します。
応力・変形:機械的な応力や変形の評価は、構造解析のツールが扱う領域です。
適用対象
代表的な適用対象
シリコンフォトニクス
熱光学位相シフタとリング共振器の波長制御に用います。
光トランシーバ・CPO
高密度に実装した素子間の熱クロストークを評価します。
レーザー・光増幅器
自己発熱による特性の変動を見積もります。
赤外センサ
メタマテリアルを用いたボロメータなど、光吸収による温度上昇を評価します。
入力と出力
何を与えると、何が得られるか
INPUT
| 構造 | 層構成と、領域ごとの材料割り当て |
|---|---|
| 材料物性 | 密度、比熱、熱伝導率。電気伝導を含める場合は導電率 |
| 熱源 | 一様な発熱、または他の解析から取り込んだ発熱や電荷のデータ |
| 境界条件 | 温度固定、発熱量、熱流束、対流、放射、断熱 |
OUTPUT
| 温度分布 | 構造内の温度場 |
|---|---|
| 熱の流れ | パワーフローモニタによる熱流 |
| 過渡応答 | 温度の時間変化と、定常に達するまでの時定数 |
| 受け渡しデータ | 光学解析へ渡す温度データ。屈折率の温度依存モデルと組み合わせて使います |
進めかた
実際の進めかた
材料の熱物性を指定する
密度、比熱、熱伝導率を与えます。固体と流体は区別して定義します。電気伝導を含めるなら導電率も指定します。
形状を作り、材料を割り当てる
発熱源と放熱経路が解析領域に入るように範囲を取ります。基板や実装を省くと温度が過大に出ます。
解析種別と物理の範囲を決める
定常状態か過渡かを選び、熱伝導だけを解くか電気伝導を含めるかを決めます。メッシュもここで設定します。
境界条件とモニタを設定して実行する
温度固定、発熱量、熱流束、対流、放射、断熱を面ごとに与え、温度とパワーフローのモニタを置きます。
発熱量そのものより、境界条件の選び方が温度分布を決めます。対流の条件は定常状態向けとされている点にも注意してください。手順の中で最も時間を使うべきなのは04です。
関連手法との関係
関連する解析手法との役割分担・連成
| 手法 | 関係 | 主な対象 | 使い分け |
|---|---|---|---|
| HEAT(本手法) | 本手法 | 構造内の温度分布 | 熱伝導方程式を有限要素法で解き、温度場と熱の流れを求めます。光学特性の変化は求めません。 |
| CHARGE | 連成 | 半導体のキャリア輸送 | 電流が半導体のキャリア輸送で決まる場合は、こちらの側で熱と自己無撞着に連立させます。 |
| FDTD | 前段 | 光吸収の分布 | 吸収から求めた発熱の分布を、熱源として受け取ります。 |
| FEEM | 後段 | 温度変化後の断面モード | 求めた温度を渡し、そちらで屈折率の温度依存モデルを通じて実効屈折率の変化を求めます。 |
| MQW | 後段 | 量子井戸の利得 | 温度を一つのスカラー値として渡す相手です。井戸内の温度分布までは反映されません。 |
対応製品
この手法を提供する製品
熱伝導解析を提供する商用ソフトウェア環境です。電気解析や量子井戸解析と同じ環境に含まれ、光学解析へのデータの受け渡しもこの環境の中で行えます。ライセンス、動作環境、導入についてはこちらをご覧ください。
Lumerical Multiphysics
FAQ
よくある質問
熱の影響が気になる構造から、ご相談いただけます
対象の構造と評価したい特性をお知らせいただければ、適切な手法と製品をご提案します。
