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解析技術 | 光学解析

偏光解析(Polarization Analysis)

光線追跡を拡張し、各光線に複素電界ベクトルを持たせて、コーティングや界面での反射・吸収が偏光状態と透過率に与える影響を評価する機能です。等方媒質の界面と複屈折媒質では扱いが異なります。独立したソルバーではありません。

位置づけ

光線追跡を拡張する解析機能

扱う量

光線ごとの複素電界ベクトル

対応製品

Ansys Zemax OpticStudio

界面で電界ベクトルがs成分とp成分に分解され、複素係数を掛けられて組み直される様子を示す図

どういう手法か

光線に電界ベクトルを載せて追う

OpticStudioでは、偏光解析は通常の光線追跡を拡張したものとして位置づけられています。光学コーティングや、反射・吸収による損失が光学系内の光の伝搬に与える影響を考慮します。場の方程式を別に解くわけではなく、追跡する光線は同じです。

通常の光線追跡は、入射角、入射偏光、界面の両側の媒質、そしてコーティングの性質に依存する電界の振幅と位相の変化を扱いません。この機能はそれを扱うために、各光線に複素成分をもつ電界ベクトルを持たせ、界面ごとに変換します。

入射側の偏光はジョーンズベクトルで与えます。2成分のジョーンズベクトルを、任意の方向をもつ光線の3成分の電界に変換する必要があるため、基準にする軸を選ぶ設定があります。集光の速い系では瞳の位置ごとに基準の向きが変わるため、意図した偏光になっているかの確認が求められます。

仕組み

等方媒質の界面では、s成分とp成分に分けて複素係数を適用する

電界ベクトルは光線の伝搬ベクトルに直交していなければならない、という制約が置かれます。等方媒質の界面やコーティングでは、光線ベクトルと面法線が作る入射面を基準に、電界をs成分とp成分へ分解します。s成分は入射面に直交する軸に沿った射影、p成分は入射面内の射影です。

分解した各成分に、複素の透過係数または反射係数を掛けます。係数が複素数であるため、振幅と位相の両方が変わります。係数は、入射側の媒質の屈折率、コーティングの各層の屈折率と厚さ、そして基板の屈折率から計算されます。掛けたあと、2つの成分は直交座標の電界ベクトルへ組み直され、次の面へ進みます。光線が面に垂直に進むときはs成分とp成分の区別があいまいになるため、基準軸の設定が必要になります。

この分解と係数の適用は、等方媒質の界面とコーティングに対する扱いです。偏光の計算すべてがこの形で進むわけではありません。複屈折媒質は専用の入出射の面で挟んで扱い、常光線と異常光線を分けて追跡します。どちらを追跡するか、あるいは一方を追跡しながらもう一方による位相の回転を考慮するかは、モードの設定で選びます。理想的な偏光素子をジョーンズ行列の面で表す場合は、2行2列の複素行列がそのまま作用します。

入射偏光の定義ジョーンズベクトルの2成分と、それぞれの位相で与えます。系全体に適用する設定と、解析ごとに与える設定があります。
基準軸の選択2成分から3成分の電界を作るために、どの軸を基準にするかを選びます。集光の速い系では瞳の位置ごとに向きが変わります。
等方媒質の界面での変換等方媒質の界面とコーティングでは、入射面を基準にs成分とp成分へ分解し、複素の反射・透過係数を掛けて組み直します。
複屈折と偏光素子の扱い複屈折媒質は専用の入出射の面で挟み、常光線と異常光線を分けて追跡します。理想的な素子はジョーンズ行列の面、実際の膜はコーティングで表します。それぞれ計算の進みかたが異なります。

この手法の強み

この手法が選ばれる理由

透過率を偏光込みで追える

面ごとの相対透過率と累積の透過率、系全体の積分透過率を、視野と波長ごとに求められます。前段の材料の透過と界面のコーティングの透過が反映されます。

偏光状態を可視化できる

瞳の位置ごとの偏光楕円を図示できます。長軸と短軸の長さ、長軸の方位角、成分間の位相差、強度が数値としても得られます。

設計に接続できる

コーティングと偏光光線追跡のデータは、メリット関数のオペランドとして扱えます。偏光の性能そのものを最適化の対象にできます。

使いどころ

向く場合と、向かない場合

向いている場面

→ コーティングを含む光学系で、偏光ごとの透過率と反射率を知りたいとき

→ 偏光子や波長板を含む系で、偏光状態の変化を面ごとに追いたいとき

→ 瞳の中で偏光状態がどう変わるかを見たいとき

→ 偏光に由来する位相の変化を評価したいとき

→ 偏光やコーティングの性能を、メリット関数に入れて設計したいとき

別の手法が適している場面

波長スケールの微細構造:光線に電界ベクトルを載せて界面の係数を掛ける方法です。回折次数、共振、近接場は幾何光線のモデルの外にあります。格子やメタアトムの応答は電磁界の解法で求め、その結果を光線追跡に持ち込みます。

大きく傾いた光線での偏光楕円:偏光の瞳マップは、光線がZ軸にほぼ平行であることを前提とし、電界のZ成分を無視します。Z軸から大きく傾いた光線では、この図の解釈は成り立ちません。

ジョーンズ行列の面での斜入射:ジョーンズ行列の面は電界のZ成分の扱いを定義しません。すなわち、平行光束の中に理想的な偏光素子を置く前提です。斜入射で実際の係数と吸収まで含めたい場合は、コーティングか複屈折の入出射の面を使います。

回折を含む伝搬:光線ではなく場そのものを面から面へ運ぶ必要がある場合は、物理光学伝搬に移ります。

適用対象

代表的な適用対象

偏光ビームスプリッタを含む系

反射する偏光と透過する偏光を分けて、光路ごとの透過率と偏光状態を評価します。

波長板とリターダの設計

複屈折媒質の厚さと軸の向きから、位相差がねらいどおりになるかを確かめます。

散乱を含む偏光の追跡

偏光に依存する体積散乱を扱い、散乱のたびに偏光と進行方向がどう変わるかを追います。

メタサーフェスとの連携

電磁界の解法で求めた偏光依存の応答を取り込み、系全体の性能を評価します。

入力と出力

何を与えると、何が得られるか

INPUT

入射偏光 ジョーンズベクトルの2成分と、それぞれの位相。偏光を使わない設定も選べます
基準軸 2成分の偏光から3成分の電界を作るときの基準にする軸
コーティング 各層の材料、複素屈折率、厚さ。層の係数や屈折率の補正値は設計変数にもできます
材料 入射側と基板の屈折率、媒質内部の透過率。複屈折を扱う場合は常光線用と異常光線用の材料の組
面の設定 ジョーンズ行列の面、複屈折の入出射の面、通常の面の形状と口径
光線の指定 視野座標、瞳座標、波長番号、面番号、標本の細かさ

OUTPUT

透過率 系全体の積分透過率と、面ごとの相対透過率・累積透過率
偏光状態 瞳の位置ごとの偏光楕円と、その長軸、短軸、方位角
電界の数値 電界の各成分と位相、成分間の位相差、強度
偏光による位相 偏光に由来する位相の瞳内分布
界面の係数 s偏光とp偏光それぞれの反射率と透過率、ダイアッテヌエーション、リターダンス

進めかた

実際の進めかた

01

偏光の物理を系に与える

面にコーティングを割り当てます。理想的な偏光素子はジョーンズ行列の面で、複屈折媒質は入出射の面で挟んで表します。

02

入射偏光と基準軸を決める

ジョーンズベクトルの2成分と位相を与え、基準にする軸を選びます。系全体に適用するか、解析ごとに与えるかを決めます。

03

変換を確認する

代表的な光線について偏光光線追跡の一覧を開き、与えた偏光が意図どおりの電界に変換されているかを確かめます。

04

評価する

瞳内の偏光状態、系全体と面ごとの透過率、瞳位置に対する透過率の変化、偏光に由来する位相を評価します。

手順03を飛ばさないでください。集光の速い系では、瞳の位置ごとにs方向とp方向が変わるため、基準軸の選びかたで各光線が運ぶ偏光状態が変わります。偏光を使わない設定での透過率は、直交する2つの偏光の平均として計算されるため、この選択の影響を受けません。

関連手法との関係

関連する解析手法との役割分担・連成

手法 関係 主な対象 使い分け
偏光解析(本手法) 本手法 コーティングと界面での偏光の変化 光線に複素電界ベクトルを載せ、界面ごとにs成分とp成分へ分けて複素係数を掛けます。透過率と偏光状態を評価します。
シーケンシャル光線追跡 前段 面の順序を前提にできる系の追跡 追跡そのものを担う機能です。この機能は、その追跡に電界ベクトルの変換を重ねたものです。
物理光学伝搬 補完 回折を含む伝搬 光線ではなく複素振幅の場を面から面へ運びます。偏光ではなく回折が問題になる場面で使います。
RCWA 前段 波長スケールの周期構造 格子やメタアトムの偏光依存の応答を電磁界の解法で求めます。その結果を光線追跡に持ち込みます。

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対応製品

この手法を提供する製品

結像、照明、レーザー系の設計と解析に使われる商用ソフトウェアです。偏光を考慮した光線追跡、コーティング、複屈折の扱いを備え、同じ環境で最適化や公差解析まで続けられます。ライセンス、動作環境、導入についてはこちらをご覧ください。

Ansys Zemax OpticStudio

製品ページを見る →

FAQ

よくある質問

これはソルバーですか。違います。通常の光線追跡を拡張し、コーティングや反射・吸収による損失の影響を考慮する機能です。マクスウェル方程式を離散化して解くわけではありません。
基準にする軸は、どれを選べばよいですか。既定はX軸を基準にするものです。ただし平行でない光線では、瞳の位置ごとにs方向とp方向の向きが変わります。ジョーンズベクトルから電界への変換が意図どおりかは、偏光光線追跡の一覧で必ず確かめてください。
偏光楕円の図はいつでも使えますか。使えません。偏光の瞳マップは光線がZ軸にほぼ平行であることを前提とし、電界のZ成分を無視します。Z軸から大きく傾いた光線では成り立ちません。ただし同じ画面が表示する透過率のほうは、Z成分を含めて計算されています。
理想的な偏光子はどう置きますか。ジョーンズ行列の面が用意されています。2行2列の複素行列で偏光子や波長板を表せますが、電界のZ成分の扱いが定義されないため、平行光束の中に置く前提になります。斜入射で実際の係数と吸収まで含めたい場合は、コーティングか複屈折の入出射の面を使います。

参考情報

最終更新日

2026-08-19

技術監修

LightBridgeテクニカルサポート

参照した資料

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